|
Vol.1 |
大会後、再び反省会が開かれた。エルドラドランチのクラブハウス内。小林と騰馬が騎乗した6回を通してGrandeがどう変化したかを、騰馬はDVDで小林に見せた。小林が目の当たりにしたのは、明らかに段々と悪くなっていく愛馬の姿だった。 「こんなショーイングでは明日につながらない。一度いいスコアが出ても、次は出なくなる」。騰馬は小林に厳しい言葉を投げかけた。「一度、丁寧なショーイングをやってみたらどうですか。それができてから、攻めるショーイングをしても遅くないですよ」 ここに来て、小林に一つの気付きが訪れた。 自分はこれまで馬をコントロールしていると思っていたが、そうではなかった。馬をコントロールできる範囲のその外側で、ショーイングをしていたのだ----。 小林は自ら騰馬に、次の大会では、ワンハンドでショーイングするInt Non Proディビジョンにはエントリーしないと申し出た。 コントロールできる範囲内でショーイングするのならば、Ltd Non Proだけでいい。両手できちんと乗れなければ、ワンハンドでも乗れない。ワンハンドでショーイングするのは両手で乗れるようになってからでも遅くない----。 そして迎えた7月の「The 1st Pacific Breeders Circuit 2nd Scene 2008」。騰馬は自分がやるつもりだったPaid Warm Upを小林に任せた。ここで小林は、これまでにないライディングを見せる。 自然で力みのないスピードでサークルをこなし、リードチェンジでは柔らかく脚を入れ、ランダウンでも馬をしっかりと抑えきった。「小林さんが変わったのは、このPaid Warm Upから」。騰馬が明かす。この時、すでに勝負はついていた。 翌日のLtd Non Proディビジョンの本番。そこには、愛馬を丁寧にコントロールする小林の姿があった。本来ならば熱くなりかねないランオフでも、冷静さを保った。そしてレイニングでは自身初となる栄冠を手に入れた。 |