PRBC
パシフィック ライディングホース ブリーダーズ コミュニティ
Vol.1
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Vol.2

 エルドラドランチのメインアリーナは、ある種の緊張感に包まれていた。次のライダー、石山真実が大きなミスなく演技を終えれば、Non ProとInt Non Proの2ディビジョンを制覇する可能性が極めて高い。誰もがそのことを意識していた。

 同じ大会に出場しているライバルとして、石山に2つのバックルを持っていかれるのは、悔しい。そう感じていたライダーも少なくなかったに違いない。だが、初日に大雨にたたられた大会を、ともに盛り上げてきた仲間同士でもある。一種の連帯感が、大会に花を添える快挙への期待と変わり、馬場を見つめるライダーたちの胸に膨らんでいった。

 そんな雰囲気の中から外れていたのは、石山本人だけだったかもしれない。愛馬、Smart Wimp Olenaの馬上で出番を待つ石山は、両ディビジョン制覇の可能性があることに全く気付いていなかった。ただ、これから出て行く馬場でしなければならないこと、その1つ1つに意識を集中させていた。妻の尚子も、余計なプレッシャーを与えないようにと、あえてダブルチャンピオンの可能性については口にしなかった。

 ゲート番が合図を送った。石山は馬場に入ると、まず馬がフェンスに寄って行かないように注意した。脚を馬体に軽く当て誘導する。センターのライン上まで来るとゆっくりと正面を向かせ、さらに歩かせる。センターで止めて馬上で後方を振り返り、前後のパイロンの間にいることを慎重に確認した。

 パターンはNRHAのナンバー5。最初のマヌーバは左サークルだ。脚とレーンを使って馬の集中を高め、フレームを整える。右の脚を馬体に当てると、呼応してヒップが入り、舌鼓の合図とともに、馬はゆっくりと駆歩を始めた。

 2日前の雨がうそのようだった。空は晴れ上がり、馬場のコンディションも回復していた。「The 1st Pacific Breeders Circuit 1st Scene 2008」の最終日となった3月22日。Non ProとInt Non Proディビジョンの2nd ゴーラウンド。ライダーたちの注目を集めながら、石山の乗ったSmart Wimp Olenaは、栄光に向かって一気に加速していった----。

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