今年も早いもので、ファイナル大会のごあいさつをする時期になりました。
謹んで御挨拶申し上げます。また多大なる後協賛を賜り厚く御礼申し上げます。
日本におけるウエスタン乗馬は、戦後の日本文化の急激な変化の時期に、映画やテレビドラマのブームによってもたらされました。このことが幸いしたのか災いをもたらしたのかは兎も角として、日本の剣道が「水戸黄門」や「東山の金さん」などの時代劇から、これが剣道だと伝わっていくのと同じように、映画やテレビのドラマで描かれたものがウエスタン乗馬だとして日本に伝わってしまいました。
日本におけるウエスタン乗馬の起点がここにあったことは、紛れのない事実です。日本の時代劇映画のチャンバラと剣道が著しく異質であるように、西部劇での乗馬シーンとウエスタン乗馬が異質であることは、現在のウエスタン乗馬を志す者なら誰でもが知っていることですが、外の一般社会では、未だにウエスタン乗馬といえば、ロデオですかといわれてしまうのが世間一般の認識です。
また戦後の日本における乗馬は、レンタル馬を基盤に営まれてきていて、その結果ライダーを基軸にプログラムされていて、誰も馬の調教ということを基盤として乗馬をという認識がないのも、日本の乗馬の驚くべき特徴だということができます。
日本におけるウエスタン乗馬の普及は、西部劇とレンタルホースシステムからの脱却なくしてできるものではないのです。
しかしこの事業は、ウエスタン乗馬を事業として営むものと個人として愛好する者達にとっては、意識革命であり容易にできることではなく、とてもとても辛く厳しい道だったようです。
今、ウエスタン乗馬という名の下に参集している日本人達は、この二つの根幹的御旗を放棄し、安易な乗馬に走り、歴史の逆戻りをしてしまっていて誠に愚かしい限りです。
この現状を鑑みるにつけて、PRBCの担うべきことの重大さを痛感せざるを得ません。この大会に参加する皆さんの一人ひとりが展開する馬術が、この「ディフォルメされた演劇の世界」と「馬の調教から逸脱した乗馬」からの決別を示すものでなくてはなりません。
2009年のファイナルの大会を迎えるに当たって、この二つのウエスタン乗馬が担ってしまった宿命ともいうべき課題へ挑戦する姿が、顕著に見られる競技大会として展開されることを祈念します。