2023年度フェイバリットホースコンテスト開催おめでとうございます。
本投票は、今季の公式戦の印象が強く反映されます。勝敗は勿論ですが、オーディエンスが直に見た印象が大きく関わっています。
実際の競技のスコアが低くても皆さんには乗り易そう、難しそうと目に映ります。それは、その投票者の技量が深く関わっており、本コミュニティの会員の目利きが育っているかどうかの指標と言えます。
元々本企画はPRBC会員各々の馬の目利きを育てるために作られたものです。馬を見る目が備われば、大会結果だけでなく、馬のポテンシャルや血統といった違う側面からも競技会を楽しむことができます。そして、本企画に是非積極的参加を頂き、競技会の楽しさを深めて頂けたらと思います。
さて、それでは投票に関してつぶやいていきます。
第5位は、Royalprincess EDです。
この馬のPedigreeはGrays Starlight系(NRHA 1Million Dollar sire※以下M)とHollywood Dun It(NRHA6M Sire)の直子との産駆で、この組み合わせは海外でもあまりないクロスで、有名な血統の組み合わせというよりは両親同士が優秀ゆえの名馬ではないでしょうか。
6歳の牝馬ですが、3〜4歳はFuturity Horse、4〜6歳はDerby Horseと呼びます。しかし、近年ではWEG 世界選手権での出場資格馬が7歳からというのもあり、アメリカでは現役時代を長くすることで世界選手権の馬の競技期間を長くしようという動きがありました。そのためNRBCのAge Event出場資格は4〜7歳となりました。
少し話が逸れましたが、当馬はDerby Horseの年齢であるということで、現役馬として年齢や技の熟練度からいっても真っ盛りな時期なのです。来年は7歳となり、ショーイングの盛んな年齢といえますので、来年もフェイバリットの上位に組み込むのではないかというのが筆者の見解です。
第4位はMoonlights Sailorです。
Topsail Whiz(NRHA12M Sire)とShining Spark(NRHA 4M Sire)のクロスは、Magic Crossと言われる程の良い組み合わせであると何度もつぶやきで書いたことがありますが、その有名どころはやはりWalla Walla Whiz(NRHA 4M Sire)が外せない名馬です。Walla Walla Whizは、2007年にNRHA DerbyでShawn Flarida(NRHA 7M Rider)が乗り、231.5ものスコアを出して優勝しました。2006年がFuturityの歳でしたが1st go、2nd go共にトップ5に入るハイスコアで予選通過し、優勝候補の1頭だったのですが、Finalは奮わず翌年のメジャーイベントまで活躍は持ち越しとなったのでした。
その後産駆が活躍し、アメリカのNRHA FuturityでもL4優勝馬がおりますし、ヨーロッパのメジャーイベントでも産駆が優勝しています。旬な話を言えば、今年はNRBC,NRHA DerbyとCasey Deary(NRHA 4M Rider)が騎乗したDown Right Amazing(Stallion)がL4 Openで優勝しました。この馬のDamは、ShesouttayourleagueでWalla Walla Whiz の直子です。このDamもまたNRHA FuturityでCaseyが優勝した馬なのでした。
さて、当のSailorは、今シーズンはFinal Sceneしか公式戦は参戦せず、それまでは馬のコンディションの維持の為にAncillary Reining Open DVで参戦していました。
今回投票の締め切りがFinal Scene開催よりも前だったので、この大会が反映されておりません。この大会が反映されていればまた違う評価だったのかもしれませんが、本当の評価は来年に持ち越しというところでしょうか。
第3位はSpooks Serenadeです。
5位のRoyalprincess EDとフルブラザー(Sire,Dam共に同じ)で、血統は全く同じでこの兄弟達の長男にあたります。
既にBreedingを開始しており、エルドラドランチで2頭、北海道の宮下牧場で1頭、来年は1頭の子馬が誕生予定です。
子馬の活躍次第で時間がかかる話ですが、Stallionとしての評価もこれから付いてきます。
サークル、スピン、ストップと+1/2以上のレベルで、Nice Non Pro Horseの称号を得ています。
馬の性別において、Geldingが最も扱いやすい馬とするなら、Stallionは力強さがありますが、反抗に出ると雄っ気の気性でタフなものが出ることがあります。そういった特性を鑑みると、この馬がNon Pro DVで活躍できるということは、ハイレベルの馬であると言えます。それでいてショーイングにおいてはアベレージ以上のパフォーマンスを見せているのでハイクオリティーのStallionと言えます。
第2位はSpooks Eldoradoです。
RoyalPrincess ED、Spooks Serenadeとフルブラザーズの1頭で、次男にあたります。
今年からOwnerが落合 身知子氏に代わり、今季はReining Non Pro DVとOpen DVで今季通してダブルエントリーをしてきました。
今季は、特にOpen DVではハイレベルのショーイングを見せ、プラス得点をコンスタントに出し、4戦3勝と今季のスーパースターはこの馬だったことに違いありません。
Non Pro DVの活躍は来年に持ち越しになりましたが、来年への期待感もありますし、兄であるSpooks Serenadeを見ると同じNice Non Pro Horseの称号を得るのも遠くないと予想できます。まだBreedingは始めていませんが受付は既に開始しています。
本場NRHAのトップアーナー(賞金獲得馬)達の多くの名に「Spooks」という名が入っています。これはGrays Starlightの愛称で「Spooky」から来るもので、この血を受け継いでいるという意味です。これら3兄弟の祖父はGrays Starlightであり、早くに逝去したのもあり貴重かつ優秀な血であることは言うまでもありません。つまりは世界レベルの血統を意味しており、日本の全てが世界レベルに劣っているわけではなく、長い年月を掛け生産ラインを整えてきたということであり、世界トップレベルに追いつこうとしている気概を忘れてはなりません。
最後に1位となりましたのはJust Dunitです。
何度もフェイバリット1位に輝いてまいりましたが、昨年に引き続きトップを獲得し2連覇を飾りました。
今季は、Reining Non Pro DVにおいて初優勝を飾れたのが功績として何より大きいのではないでしょうか。これによりOpenとNon Pro DVの2冠を得ました。
元々、Non Pro DVで結果が付いてこなくてもその様子から有り余る評価が付いていた馬でしたが、フェイバリットホースの結果を見るとかなりの接戦のスコアとなりました。それでも1位となったのはやはり今季の競技成績が大きかったのではないでしょうか。
とはいえ、Non Pro DVで安定感のあるショーイングをしていたかと言えばそうではなく、まだまだ荒削りの演技なのですが、それにも関わらず仕事をこなすJustの優秀ぶりが投票につながったのではないでしょうか。裏を返せばまだ評価が上がるということなので、どこまで評価が上がるかこれからがとても楽しみです。
基本的にフェイバリットの投票は、当該シーズンの成績で採点しますが、オーナーの石塚氏は競技経験が浅いにも関わらず、実に5年余りで1ハンドライダーまでに成長し、しかもNon Pro DV優勝を勝ち取りました。そういった成長には、優秀な馬に乗っていることで得られることが非常に大きいからであり、いわゆる馬の「安心感」が投票者に点数を高く付けさせやすくしているのではないでしょうか。
Pedigreeは、Hollywood Dun ItとSmart Chic Olena(NRHA 7M Sire) Mare とのクロスで、素晴らしい血統達です。特にこの馬のBreederは近年イタリアのトップトレーナーをアメリカの自身のランチで雇い、積極的に自身の生産馬のプロデュースをしているところです。
以上の見解となりました。
常に世界のReining事情は変わっており、賞金の上がった大会や、アメリカだけではなくヨーロッパの様子、またアメリカの大手Ranchがヨーロッパのトップトレーナーをスカウトして本場アメリカに参戦しているのが何件もありました。そういった事になればトレーナーにより血統の得意不得意、マインドのタフな馬や神経の細い馬を乗りこなすなど、そういったケースが多種多様になることでしょう。そうなれば一概にこの血統が一番良いとか悪いとか言えず、特色を吟味して、どのトレーナーにどの馬を任せるべきか、ブリーダーやホースオーナーは試行錯誤をしているのです。
皆誰もが自身の馬を世界一にしたいと思う気持ちから、こういった発想に行くのであって、血統の流行は結果から来るものですが、誰もが世界を変えたいと思って試行錯誤や勝負事の結果で紡いでいるものですから、不変のものではないのです。
そのような背景を見ながらフェイバリットホースコンテストを見れば、2位、3位、5位のようなGray StarlightとHollywood Dun Itの組み合わせが、海外では流行っていなくても一躍流行りだすこともあるわけです。そうなったら我がPRBCのブリーディングは世界最先端を走っていたと言えるわけです。
つまり、私が言いたいのは近年スターホースがいて毎年似たような結果に見えるかもしれませんが、各国のレイニング事情を知りながら見ていれば、多種多様な楽しみができるということです。
それはまだ、私やほんの一握りの人々しか味わうことができていないことなのかもしれませんが、これから先少しでもそのような楽しみ方を味わえる人が増えるなら、将来の日本レイニングはまだまだいけるものだと思います。