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第1回T.T.クリニックレポート

*第3回T.T.クリニックレポート

第3回T.T.クリニックレポート
トレーナー委員会 土岐田 騰馬

 6月6日(土)、7日(日)と、北海道網走市のノーネームランチにて講習会を実施しました。

 講習会を開催して3回目となった今回は、初日に受講者3名、2日目に5名と、常連の受講者達に加えて新規受講者が増え、今までで一番の賑わいを見せました。

 また今回は両日とも見学者数名の方にお越し頂き、講習の様子を見ていただくことが出来ました。これはクリニックを開催してから初めてのことで、少しでも興味を持って足を運んでいただけたことは非常に嬉しいことでした。
 御礼申し上げます。

 さて、今回の実技講習は、昨年よりも受講者の方々の上達が見て取れたことが印象に残りました。右手前の駈歩が全くといっていい程出なかった状態が、三回に一回は正しい手前で走るようになったこと、推進するのに非常に反応の鈍い馬で、以前よりもしっかり駈歩を持続できるようになったことなど様々なエピソードがありました。
 また、今回実技では初参加の方で、駈歩をするのになかなか勇気を持てなくて出来なかったのが、2日目には自由自在に駈歩できるようになったことが特に印象的でした。
 今回、初日の午後の講義の締めに、福井氏所有でPRBCのIBSシステムにも登録されているスタリオン(種馬)、Gallo Gold Codyに騎乗させていただき、レイニングのパフォーマンスの簡単なデモンストレーションを行いました。
 特にこの馬の最大の持ち味であり、産駒にも受け継がれているスピードコントロールは、現役を離れた今でも緩急がはっきり付いたパフォーマンスを、見学者の方々に披露することが出来ました。
 昨年同様、騎乗後室内での講義は、クリニック中の反省から始め疑問点の質疑応答、それに対してのパフォーマンスの本質・構造をメインに行いました。

 2日目はそれとは別のテーマを、挙げました。
 そのテーマとは、「ライダーが上達するためには、何を考えればよいか」です。
 一鞍のなかでの問題改善、または向上を目的としてその練習法が正しい方法なのかどうかを試行錯誤し、色々多彩な練習方法やトレーニング法をと考えることが多いのではないでしょうか。
 私はライダーが上手くなるためには、練習法の工夫や数多くの知識を深める前に、もっと考えるべきことがあるのではないだろうかと投げかけました。
 私がいう考えるべきこととは、具体的に馬がどのような状態なのか。向上を目指すとはどのようなゴールへ向かいたいのか、当事者にとって問題意識が明確なのかということです。
 例えば、「日頃、駈歩発進を良くしたいがどうすればよいか分からない」との質問があがりました。
 この方は、この問題が起きた時に、「どうすればよいか」の方法を考えつづけていたのですが、いくら考えても思い浮かばなかったようです。
 私は「どのような良くなった状態にしたいのか?」を聞きました。
 しかし、質問の意味が分からなかったようです。なので、どのような状態を嫌と感じたのかを聞きました。
 すると、「準備運動の際に速歩から駈歩に移行するのに、スムースに移行できないのが嫌だ」との答えでした。
 この回答がきっかけで、話を聞いていくうちにその方は「準備運動時、速歩からの駈歩発進を求める際に、途中で馬が停止してしまう。それで、いつも無理やり脚を強く使って駈歩を出さざるを得ない。このぎこちない駈歩への移行になってしまうことを改善しスムースに駈歩に移行できることを目指している」と述べてくれました。
 この方にとっての一番の問題は、直面している問題の内容が自分にとって具体的になるところまで考えていなかったことです。
 準備運動時に問題が起きているのだから、ライダーはそもそも準備運動時に何を目的として馬を運動させているのか?「発進時にぎこちない動きである」ということは、馬は慌てているのだろうか?それとも怠けているのだろうか?そのような馬の状態を判断して、ライダーはどのようなことを心がけて駈歩発進をすべきなのか?などの質問を他の受講者も含めながら討論を行いました。
 問題の当事者である受講者は、自分のしている準備運動を振り返りながら、もし馬が怠けているとしたら、慌てているとしたらの二点を想定して、試してみるということを議論することに落ち着きました。

 今回私が一番念頭においてお話したことは、トレーニング法や練習法は馬の問題の数だけあるでしょうが、それをただ単純に実践すれば上手くいくわけではなくて、馬の問題の解決や更なる技術の向上を目的とした時に、ライダーが馬をどう問題と感じているのか、また何が嫌なのか、何を良くしたいのか、というように「こうしたい」ということを、正しい解釈なのかどうかは別にして、自分のレベルの範囲で整理しておくことが大事だと言いたかったのです。
 なぜなら、「こうしたい」という目的意識が、馬の現状をはっきりと見ることになるからです。
 調教法や、乗馬の知識を得たからライダーは上手くなるわけではなく、ライダーに目的意識があるからこそ、知識はライダーの上達に繋がるのだとお話させていただきました。

 今回の講習会を振り返り、お世話になったノーネームランチオーナーの福井氏とも相談しましたが、毎回講習会の際に時間を決めて、レイニングホースのパフォーマンスの実演を織り交ぜたデモンストレーションを実施することの重要性を実感しました。
 受講者の皆様の技術向上は勿論、見学者の方にも少しでもレイニングに興味を持っていただけるような企画を用意しながら講習会を実施していこうと思います。

2009.6.23