PRBC
パシフィック ライディングホース ブリーダーズ コミュニティ
憲章
入会のご案内
馬匹登録のご案内
競技会・イベント
Cool Down
PRBC概要
委員会
お問い合わせ
*第1回T.T.クリニックレポート

第3回T.T.クリニックレポート

T.T.クリニックレポート
トレーナー委員会 土岐田 騰馬

 去る6月14日(土)、15日(日)の二日間に渡り、北海道網走市にあるノーネームランチにて講習会を実施したことをご報告いたします。
 今回の講習会では土曜日に二名、日曜日に四名の方が受講されました。
 初日は生憎の雨だったのですが、悪天候にも負けずに馬装して馬と共に馬場に向かっていく受講生達の姿には目を見張るものがあり、その気迫の甲斐あってか、二日目は晴天に恵まれ絶好の乗馬日和となりました。
 スケジュールは両日共に、午前中は各受講者が現在試みているテーマをメインとした実技講習を行い、午後から室内で駈歩のリードをコントロールする上での馬の性質について講義を行いました。

 通常の講習会レポートでは、上記のテーマに対する参加者の奮闘ぶりや、テーマの解説を書くのでしょうが、今回のレポートでは別の視点で私が感じたことをお話したいと思っております。その理由は、今回講師をやらせていただいたことで、一インストラクターとして実に興味深い現象に巡りあったからです。

 今回受講された方々にはある共通点がございます。
 それは、どの方も自馬の持ち主であったこと、そして「トレーナー」が身近にいないことです。
 私は現地に行く前には、馬が著しく悪い状態を想像しておりました。パフォーマンスの精度が落ちていることはもちろん、ライダーの要求に対して、馬が精神的に慌てているのではないか、と。しかし、現地について目にしたものは、予想に反して馬が落ち着いている姿でした。

 講習会の最中、彼らに話を聞いてみたところによりますと、どの方も口を揃えて「自分のみで乗るようになってから大体半年ぐらいだが、つなぎ場に連れてきてから馬装するのにボディブラシを掛けるのすら、馬が落ち着かなく大変だったために恐怖感や不安なことはたくさんあった。」とのことでした。しかし、「まずは自分が怖くなく、できることからやってみた。常に馬の状態を気に掛けることで、やっと最近、現在の落ち着いた状態で馬に乗れるようになってきた。」とのことでした。
 彼らにとって「出来ること。」とは、「ボディブラシを掛ける。」という判断の前に、馬がどのような状態かを、まず観察することから始めたとのことです。数週間運動していないのかと感じたときに、厩務員の方に放牧してもらうという要請をすることで、馬が落ち着いて人間の指示に応えられる状態を作ることを心がけたとのことでした。
 そして次に、ボディブラシを掛ける際のコンタクトについても、馬に落ち着きが無いのをおかまいなしに掛けるのではなく、つなぎ場に繋いであるリードを引き付け、人に注意を向けさせてから掛けていくなどの考慮をしていったとのことでした。
 実技講習の際にも同様の事を感じたのですが、私はライダーが馬に明確な目的意識を持つことが大切なのではないかと考えます。
 その際、ライダーが求めることに対して馬がどのような反応を見せたかを観察することで、誉めたり、叱ったりできるようになるのではないでしょうか。
 彼らが馬に乗っている姿には、その運動を行う目的が確立しつつあるようにみえました。
 インストラクティングしない状態で、彼らが速歩の運動をする際に、最初は歪なサークル運動をしていたのが、続けていくうちにある程度一定の軌道で円を描き始めるようになりました。
 彼らに、馬に乗る際の一つ一つの行動への明確な目的が芽生えつつあることが、彼らの馬が精神的に荒れていなかった理由の一つなのだと思います。これは乗っている時も下りている時も同様のことが言えるのではないでしょうか。

 自分で考えて馬に乗らざるをえない彼らの場合、危険なこと、問題なことが「トレーナー」が身近にいる方達と比べるとよりリアルに感じるのだと思います。
 このような「不安」という現実的な問題を克服するためには、彼らは「自分ができること」をより思考せざるをえない。そのため馬の状態をよく観察する目が芽生え始め、現在に至ったのではないかと私は感じました。
 決して、彼らはとてつもないパフォーマンスをこなすような方たちではありませんでしたが、馬の状態をよく見極めようと観察しながら馬に乗る方たちでした。

 私が今回もっとも感じたことは、ノンプロが上達するためにトレーナーがインストラクティングする際「教えるべき点」と「教えてはならない点」があるのではないかと改めて考えさせられたことでした。
 今回講習会の参加者たちを観ていると、「インストラクターは要らないのではないだろうか」と思わせる程、馬のことを観察していた方たちです。しかし、彼らからすればこの境遇を望んでいたわけではありません。いつも馬と必死に向かい合わなければ、危険を伴うことをより強く感じるために万全を期しているのでしょう。
 それに対して、トレーナーが身近にいる方たちの場合、危険がある場合にトレーナーが補助、もしくは代わりに馬の状態を矯正することで安全な乗馬ライフを送りやすいのかもしれません。しかし、前者の方たちほどのような問題に対しての緊迫感は薄く、危険視する必要が減るために、馬を観察する力が磨かれづらいのではないでしょうか。

 「トレーナーは必要なのか」というのはあまりに極論なテーマなのかもしれませんが、ノンプロの方が馬に乗る上での「道しるべ」のような存在はおそらく、誰にとっても必要なのだと私は思います。
 ただし、必ずしもアドバイスをし続けることがノンプロの方にとって良いことではなく、ノンプロの方自身が、ライディング時に馬のことを観察する力を高めることが、安全性を高め、何より上達へとつながるのではないでしょうか。
 私達トレーナーは、馬のことはもちろんのことながら、ノンプロの方が何を意識して馬に乗っているかを観察しながらインストラクティングできる技術が必要なのではないかと改めて認識させられた講習会でした。

2008.8.9